武藤誠 名誉教授(医学研究科特命教授)、坂井義治 医学研究科教授、三好弘之 産官学連携本部特定研究員(特任准教授)、前川久継 医学研究科研究生らの研究グループは、手術で摘出した大腸がんからがん幹細胞を効率よく分離し、立体的に培養する方法(スフェロイド培養)を開発しました。さらに、大腸がんスフェロイドを実験用マウスに移植してがんを形成させ、このマウスで投薬試験を行うことによって、抗がん剤の効果を精度よく予測する「PDSX(Patient-derived “spheroid” xenograft)」法を開発しました。
本研究成果は、2018年4月24日に米国の国際学術誌「Oncotarget」、および2018年7月3日に米国癌学会誌「Molecular Cancer Therapeutics」のオンライン版に掲載されました。
研究者からのコメント
左から、武藤名誉教授、叁好特定研究员、前川研究生
今回の研究成果により、患者さん自身の大肠がん细胞を使った个别化医疗の実现に一歩近づきました。次のステップでは、前向き试験によって治疗中の患者さんでの効果を确认するとともに、手术で摘出したがんからスフェロイドを培养する工程を事业化する必要があります。今后は临床现场の医师や民间公司と连携し、化学疗法の必要な多くの患者さんが受けることのできる、廉価で信頼性の高い医疗サービスの开発に取り组みます。
概要
大肠がんは日本で最も罹患数の多いがんで、各人に有効な抗がん剤を予测して投与する「个别化医疗」の実现が望まれています。手术で摘出したがん组织からがん细胞を培养し、そこにさまざまな抗がん剤を投与して抗がん効果を见ることは、この个别化医疗を早期に実现できる方法です。
本研究グループは、「がん细胞スフェロイド」(立体的ながん细胞の块)を体外培养して抗がん剤の効果を调べる方法を改良し、コストを大幅に抑えるとともに试験に必要な期间を短缩することに成功しました。本研究により、がん细胞スフェロイドを2週间から2ヶ月という短期间で効率よく树立でき、さらに培养の成功率が従来の6割から9割にまで上がりました。
また、本研究では、培養して十分な量に増やしたがん細胞スフェロイドを免疫不全マウスに移植することによって、がん組織を直接移植する従来法よりも効率よく、短期間で移植がんを作出する「PDSX 」法の開発に成功しました。今回発表したスフェロイド培養およびPDSXはいずれも従来の技術より低コスト、?効率であり、医療サービスとして直ちに提供できる?準にあります。今後は臨床現場での効果を検証する予定です。
図:今回开発した技术に基づく大肠がん个别化医疗构想
详しい研究内容について
书誌情报1
【顿翱滨】
【碍鲍搁贰狈础滨アクセス鲍搁尝】
Hiroyuki Miyoshi, Hisatsugu Maekawa, Fumihiko Kakizaki, Tadayoshi Yamaura, Kenji Kawada, Yoshiharu Sakai and M. Mark Taketo (2018). An improved method for culturing patient-derived colorectal cancer spheroids. Oncotarget, 9(31), 21950-21964.
书誌情报2
【顿翱滨】
Hisatsugu Maekawa, Hiroyuki Miyoshi, Tadayoshi Yamaura, Yoshiro Itatani, Kenji Kawada, Yoshiharu Sakai and M. Mark Taketo (2018). A Chemosensitivity Study of Colorectal Cancer Using Xenografts of Patient-Derived Tumor Initiating Cells. Molecular Cancer Therapeutics, 17(10), 2187-2196.
- 京都新聞(8月10日 29面)、日刊工業新聞(8月17日 3面)および読売新聞(8月14日 27面)に掲載されました。