絶縁体の量子振動の観測に成功 -金属でも絶縁体でもない前例のない電子状態を発見-

ターゲット
公开日

佐藤雄貴 理学研究科博士課程学生、笠原裕一 同准教授、松田祐司 同教授、伊賀文俊 茨城大学教授、杉本邦久 高輝度光科学研究センター主幹研究員、河口彰吾 同研究員らの研究グループは、米国ミシガン大学、英国オックスフォード大学、米国ロスアラモス国立研究所と共同で、本来電子を流さない絶縁体であるイッテルビウム12ホウ化物(YbB 12 )において、强磁场中で量子力学的効果により电気抵抗と磁化率が磁场とともに振动する现象(量子振动)を初めて観测しました。

本研究成果は、2018年8月31日に米国の科学雑誌「厂肠颈别苍肠别」のオンライン版に掲载されました。

研究者からのコメント

私达の身のまわりにある物质は、絶縁体と金属の2种类に分类されると考えられてきました。本研究成果はそのような従来の常识を覆すものであり、絶縁体とも金属とも区别できない新しい状态があることを示しました。このような新奇电子状态の研究を今后さらに进展させることで、従来の枠组みを超えた新现象の発见が期待されます。

概要

物质には电気を流す金属と流さない絶縁体の2种类が存在します。金属では「量子振动」という现象が起きることが知られています。この量子振动とは、强磁场中で量子力学的効果により电気抵抗や磁化率が磁场とともに振动する现象で、量子振动が観测されることは金属状态が実现していることを意味します。

ところが、近年「近藤絶縁体」と呼ばれる希土类元素を含んだ化合物サマリウム6ホウ化物で、磁化の量子振动が観测され注目されています。ただし、この絶縁体では、电気抵抗では量子振动が起きず、量子振动の起源や解釈を巡って大きな问题となっていました。

本研究では、别の近藤絶縁体イッテルビウム12ホウ化物(驰产叠 12 )に着目し、大型放射光施设厂笔谤颈苍驳-8で结晶构造とその纯度(単相性)を确认しました。続いて、高感度磁化测定(磁気トルク测定)および精密电気抵抗测定を、米国立强磁场研究所において极低温かつ高磁场中で行いました。その结果、この驰产叠 12 において、磁化だけでなく电気抵抗における量子振动を世界で初めて観测しました。さらに、この量子振动をもたらす电子状态が、通常の金属と同様のふるまいを示すことも明らかとなりました。本研究成果により、驰产叠 12 は絶縁体とも金属とも区别することができない前例のない电子状态をもつことが示唆されます。

図:驰产叠 12 の结晶构造、金属における磁场中のフェルミ面、量子振动の例

详しい研究内容について

书誌情报

【顿翱滨】

Z. Xiang, Y. Kasahara, T. Asaba, B. Lawson, C. Tinsman, Lu Chen, K. Sugimoto, S. Kawaguchi, Y. Sato, G. Li, S. Yao, Y. L. Chen, F. Iga, John Singleton, Y. Matsuda, Lu Li (2018). Quantum oscillations of electrical resistivity in an insulator. Science, 362(6410), 65-69.