白川久志 薬学研究科准教授、金子周司 同教授、筒井真人 薬学部生(現?日本たばこ産業 研究員)、平瀬僚 同学部生(現?マルホ株式会社 研究員)、宮村咲映 同学部生らの研究グループは、多発性硬化症における新たな神経炎症および脱髄の発生?増悪メカニズムを解明しました。
本研究成果は、2018年9月11日に、国際学術誌「Journal of Neuroscience」に掲載されました。
研究者からのコメント
左から、白川准教授、筒井氏、平瀬氏、宫村学部生
多発性硬化症は、神経轴索の髄鞘が障害され、神経症状の再発や寛解を繰り返す、厚生労働省による指定难病の一种です。今回の発见により、マクロファージに発现する活性酸素种感受性イオンチャネルである罢搁笔惭2の活性化が、ケモカイン颁齿颁尝2を产生し、その后の好中球浸润による神経炎症?脱髄を悪化させるという、病态増悪に関与する新たな机能分子と新たな细胞群が明らかになりました。今后はこのような疾患メカニズムと中枢神経系に常在する细胞との関连性に着目して、神経炎症?脱髄の発生/増悪メカニズムのさらなる解明を目指して検讨する予定です。
概要
多発性硬化症は、运动麻痺や感覚障害、视力障害、排尿/排便机能障害、精神症状などの様々な神経症状が现れる难治性の神経疾患です。详细な原因は分かっていないものの、神経细胞の轴索を覆っている髄鞘(ミエリン鞘)がリンパ球の攻撃により障害を受けることで発症する脱髄性の自己免疫疾患と考えられています。
本研究グループは、マウスを使って多発性硬化症の病态モデルを作成し、神経炎症および脱髄の発生?増悪メカニズムを调べたところ、中枢神経系の神経炎症?脱髄部位にマクロファージが集まっており、ケモカイン(白血球走化性因子)である颁齿颁尝2を过剰に产生して好中球をその部位に大量に呼び寄せることで、さらなる神経炎症の増悪を引き起こしていることを见出しました。また、そのマクロファージに発现する活性酸素种感受性の颁补 2+ 透过性阳イオンチャネルである罢搁笔惭2(トリップエム2)を抑制すると、その増悪が抑えられることを明らかにしました。
本研究成果により、活性酸素种感受性チャネルである罢搁笔惭2の阻害や、マクロファージによる好中球浸润の抑制が、多発性硬化症の新たな治疗法の开発につながることが期待されます。
详しい研究内容について
书誌情报
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Masato Tsutsui, Ryo Hirase, Sakie Miyamura, Kazuki Nagayasu, Takayuki Nakagawa, Yasuo Mori, Hisashi Shirakawa and Shuji Kaneko (2018). TRPM2 exacerbates central nervous system inflammation in experimental autoimmune encephalomyelitis by increasing production of CXCL2 chemokines. The Journal of Neuroscience, 38(39), 8484-8495.