植田充美 農学研究科教授、青木航 同助教、渡辺祥 同修士課程学生(研究当時)、大谷優太 同博士課程学生らの研究グループは、三菱ケミカル株式会社と共同で、代謝工学とマルチオミックス解析を活用し、栄養価の高い新しい機能性野菜(ホウレンソウ)の開発に成功しました。
本研究成果は、2017年6月6日に農学の国際学術誌「Journal of Agricultural and Food Chemistry」、および2018年9月8日に米国の学術誌「PLOS ONE」のオンライン版に掲載されました。
研究者からのコメント
左から、青木助教、渡辺修士课程学生、大谷博士课程学生
本研究では、私たちが推进しているマルチオミックス解析技术によって、栄养価の高い新规机能性ホウレンソウの开発に成功しました。今回开発した叶酸成分が豊富なホウレンソウは胎児の脳の発达に、抗酸化物质としてはアントシアニンより强力であるものの、摂取することがなかなか难しかったベタシアニンが豊富な赤茎ホウレンソウは、抗老化などに机能があるものと考えています。さらに、これらの栄养素を、日常的に食する食卓の一品(一日あたり)でまかなえる量にまで、品质を高めることができました。
概要
机能性食品の开発には、これまでは主に遗伝子组み换え技术が使われてきました。しかし日本では厳しい规制により、一般には流通していません。そこで本研究では、すでに确立されている叁菱グループの水耕栽培系を用い、その液肥の成分调整によって栄养価の高い新规机能性ホウレンソウの开発を试みました。
本研究グループは、まず叶酸を豊富に含むホウレンソウの开発を行いました。叶酸は代谢に必须であるばかりでなく胎児の脳の成长にも関与する重要な栄养素ですが、ヒトの体内では合成できないため食物からの摂取が必要です。そこで、サラダホウレンソウの水耕栽培技术を用いて、叶酸を多く含むホウレンソウの开発を试みました。液肥にフェニルアラニンを添加した条件でホウレンソウを栽培したところ、通常の约2倍の叶酸量を确认しました。
植物が合成する色素成分は抗酸化力を高め、ガン细胞増殖の抑制にも有効と考えられていますが、さらに本研究は赤茎ホウレンソウに含まれる赤色色素成分の一部が、ベタシアニン系の化合物であることを同定しました。そして、スクロースを添加した条件で赤茎ホウレンソウを栽培したところ、通常の约5倍のベタシアニンが含まれていることを确认しました。
本研究成果は、代谢工学のこれまでのデータの蓄积活用とバイオテクノロジーにおけるマルチオミックス解析手法の融合によるものです。本研究手法は、今后の食用野菜の育种に大いに活用でき、一般市场への新しい高付加価値食品への贡献が期待されます。
図:(左)水耕栽培ホウレンソウ(叁菱ケミカル社)と叶酸の化学式、(右)水耕栽培された赤茎ホウレンソウとベタシアニンの化学构造
详しい研究内容について
书誌情报1
【顿翱滨】
Sho Watanabe, Yuta Ohtani, Yohei Tatsukami, Wataru Aoki, Takashi Amemiya, Yasunori Sukekiyo, Seiichi Kubokawa, and Mitsuyoshi Ueda (2017). Folate Biofortification in Hydroponically Cultivated Spinach by the Addition of Phenylalanine. Journal of Agricultural and Food Chemistry, 65(23), 4605-4610.
书誌情报2
【顿翱滨】
【碍鲍搁贰狈础滨アクセス鲍搁尝】
Sho Watanabe, Yuta Ohtani, Wataru Aoki, Yuko Uno, Yasunori Sukekiyo, Seiichi Kubokawa, Mitsuyoshi Ueda (2018). Detection of betacyanin in red-tube spinach (Spinacia oleracea) and its biofortification by strategic hydroponics. PLOS ONE, 13(9):e0203656.