矢代敏久 農学研究科特定研究員(現?シドニー大学研究員)、松浦健二 同教授、小林和也 フィールド科学教育研究センター講師らの研究グループは、本来はオスとメスが共同で社会生活を営んでいるシロアリにおいて、メスしか存在せず、単為生殖だけで繁殖しているシロアリを世界で初めて発見しました。
本研究成果は、2018年9月25日に、英国の科学誌「BMC Biology」のオンライン版に掲載されました。
研究者からのコメント
アリとシロアリの社会の违いは何かと闻かれた时に、まずお答えするポイントは、アリはメス社会、シロアリは両性社会を営んでいるということです。アリの社会は女王とメスのみのワーカーで构成されている(オスは交尾すると死んでしまう)のに対し、シロアリの社会には王と女王、そしてオスとメスのワーカーや兵アリがいます。
しかし、この大前提はもはや适当ではなくなりました。なぜなら、シロアリであるにもかかわらず、メスしかいない社会を営むものが见つかったからです。両性の社会からオスがいなくなっても社会は存続できるという事実は、「昆虫の社会を知り尽くす」をモットーに研究を行っている私たちにとっても衝撃的でした。どのような経纬でこのような社会が进化したのか、性を失ってからどのくらい长く存続可能なのか、兴味は尽きません。
概要
多くの生物に性が存在すること、そしてオスの存在意义は、生物の进化に関する最大の谜の一つです。昆虫ではメスだけの単為生殖によって繁殖する种が多く见られますが、シロアリにおいては、両性共同社会だとこれまで考えられてきました。
本研究グループは、日本固有のシロアリであるナカジマシロアリについて、本州から冲縄本岛まで、生息地として知られているほぼ全ての地域で採集调査を行い、得られたコロニーの构成メンバーの性别を调べたところ、四国と九州にはメスしかおらず、オスがいないことが判明しました。男女共同社会だと考えられてきたシロアリ社会において、「メスだけで社会を営んでいるシロアリ」の発见は世界で初めてのことです。
また、このメスしかいない単為生殖个体群と、オスとメスの両方がいる有性生殖个体群の比较から、オスの丧失はナカジマシロアリの进化の过程で一度だけ生じた现象であることや、単為生殖个体群の祖先はオスを丧失する前段阶として単為生殖个体群の进化を促进する复数の特徴を持っていたことが见出されました。
本研究成果は、オスとメスが営む社会にとって、オスは絶対に必要な构成要素ではなく、条件がそろえば丧失し得る存在であることを示しており、生物にとって性の意义とは何か、そして社会にとってオスの存在意义とは何かを考える上で重要な意味を持つと考えられます。
図:ナカジマシロアリの単為生殖个体群と有性生殖个体群。(左上)単為生殖个体群の巣内にはメスしかおらず(女王、メスのワーカー、メスの兵アリ)、(左下)女王アリの受精嚢(=オスから受け取った精子を蓄えておく器官)には精子が全く入っていない。(右)四国と九州の个体群はメスしかいない単為生殖个体群であることが判明した。
详しい研究内容について
书誌情报
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【碍鲍搁贰狈础滨アクセス鲍搁尝】
Toshihisa Yashiro, Nathan Lo, Kazuya Kobayashi, Tomonari Nozaki, Taro Fuchikawa, Nobuaki Mizumoto, Yusuke Namba and Kenji Matsuura (2018). Loss of males from mixed-sex societies in termites. BMC Biology, 16:96.
- 読売新聞(9月25日夕刊 10面)に掲載されました。