福澤秀哉 生命科学研究科教授、梶川昌孝 同助教、新川はるか 同研究員、西村芳樹 理学研究科助教、幡野恭子 人間?環境学研究科助教、加藤美砂子 お茶の水女子大学教授らの研究グループは、オートファジーが、藻類のデンプンや脂質の蓄積と分解に重要な役割を果たすことを明らかにしました。
本研究成果は、2018年10月6日に、国際学術誌「Plant & Cell Physiology」のオンライン版に掲載されました。
研究者からのコメント
光合成によってデンプンや油脂を蓄积する微细藻は、次世代のバイオ燃料として期待されています。また、栄养の少ない自然环境で生命が生き残るためには、さまざまな仕组みが必要です。本研究は、微细藻で初めてオートファジー不全株(変异株)を用いて、デンプンの蓄积や脂质の分解にオートファジーが必要である事を示すことができた研究です。
概要
動植物や菌類と同様に、藻類にもオートファジーに必要なATG遺伝子(Autophagy‐related gene:オートファジー関連遺伝子)が保存されています。しかし、藻類におけるオートファジーの機能については検証が進んでいませんでした。
本研究グループは、藻类におけるオートファジー不全株(础罢骋8および础罢骋3の遗伝子を欠损した変异株)を世界で初めて単离しました。また、そのオートファジー不全株は野生株と异なり、窒素欠乏条件での细胞生存性が急激に低下することから、细胞の生存にオートファジーが必要であることが判明しました。
さらに、本研究グループは、栄养欠乏条件での中性脂质(罢础骋)とデンプンの蓄积量について补迟驳8変异株を代表として调べることで、これらの代谢制御にオートファジーが果たす役割を検証しました。その结果、オートファジーは、窒素および硫黄欠乏条件において蓄积したデンプンの维持に必要なこと、窒素を再添加した时の中性脂质分解に必要なこと、また、リン酸欠乏条件においてはデンプン蓄积に必要なことが见出されました。
また、マウスや线虫では、ミトコンドリアの母性遗伝にオートファジーが関わるかどうか议论があったので、緑藻クラミドモナスの変异株を使って母性遗伝を调べたところ、緑藻クラミドモナスではオルガネラゲノムの母性遗伝にオートファジーは関与していないことが示唆されました。
今后は、本研究で単离したオートファジー不全株を用いて、种々の异なる生理的条件でのオートファジーの役割が明らかにされること、さらに藻类を原料とするバイオ燃料生产において生物学的封じ込めによる安全性确保のツールとなることが期待されます。

図:窒素欠乏条件6日目の野生株(左)とオートファジー不全株(右?补迟驳8変异株)。尝顿:中性脂质を含む油滴、厂:デンプン颗粒。右の补迟驳8変异株で油滴がデンプン颗粒より多い。
详しい研究内容について
书誌情报
【顿翱滨】
Masataka Kajikawa, Marika Yamauchi, Haruka Shinkawa, Manabu Tanaka, Kyoko Hatano, Yoshiki Nishimura, Misako Kato, Hideya Fukuzawa (2018). Isolation and characterization of Chlamydomonas autophagy-related mutants in nutrient-deficient conditions. Plant and Cell Physiology, 60(1), 126-138.
- 毎日新聞(11月20日 25面)に掲載されました。