井上謙一 霊長類研究所助教は、量子科学技術研究開発機構、米国ノースカロライナ大学、米国マウントサイナイ医科大学、慶應義塾大学と共同で、既存薬よりも性能と安全性を大幅に高めた人工受容体作動薬候補DCZを開発しました。
今回の人工受容体作动薬顿颁窜の开発によって、既存作动薬の约1/100の量で标的の神経细胞の「スイッチ」を安全かつ素早く切り替えられるようになりました。さらに、记忆を担当するサルの前头前野の神経细胞に「スイッチ」を导入し、顿颁窜を投与することで记忆を繰り返し「オフ」にすることに世界で初めて成功しました。
本研究成果は、代表的な実験动物であるマウスや、ヒトへの応用前段阶の试験で重要视されるサルでの有効性が确认できたことから、今后、脳机能や精神?神経疾患の基础研究に大きく贡献することが期待されます。また临床応用の観点からも意义は极めて大きく、例えばてんかんの治疗では、异常兴奋の原因となる神経细胞にだけ「スイッチ」を导入し、症状が出始めた时にすぐに顿颁窜を投与することで、素早くかつ副作用を起こさずに症状を缓和する、などといった応用が考えられます。
本研究成果は、2020年7月7日に、国際学術誌「Nature Neuroscience」のオンライン版に掲載されました。
図:本研究の概要図
详しい研究内容について
书誌情报
【顿翱滨】
Yuji Nagai, Naohisa Miyakawa, Hiroyuki Takuwa, Yukiko Hori, Kei Oyama, Bin Ji, Manami Takahashi, Xi-Ping Huang, Samuel T. Slocum, Jeffrey F. DiBerto, Yan Xiong, Takuya Urushihata, Toshiyuki Hirabayashi, Atsushi Fujimoto, Koki Mimura, Justin G. English, Jing Liu, Ken-ichi Inoue, Katsushi Kumata, Chie Seki, Maiko Ono, Masafumi Shimojo, Ming-Rong Zhang, Yutaka Tomita, Jin Nakahara, Tetsuya Suhara, Masahiko Takada, Makoto Higuchi, Jian Jin, Bryan L. Roth & Takafumi Minamimoto (2020). Deschloroclozapine, a potent and selective chemogenetic actuator enables rapid neuronal and behavioral modulations in mice and monkeys. Nature Neuroscience, 23(9), 1157-1167.