田中賢 基础物理学研究所特定研究員、吉川 耕司 筑波大学講師、吉田直紀 東京大学主任研究者?教授、斎藤俊 ミズーリ州立ミズーリ工科大学助教授の研究グループは、筑波大学と東京大学が新たに開発したブラソフ方程式の高精度計算手法と、国内を代表するスーパーコンピュータを組み合わせることによって、ブラソフ方程式を直接解き、宇宙を高速で飛び交うニュートリノの6次元数値シミュレーションを行うことに、世界で初めて成功しました。
物质を构成する基本的な素粒子の一つであるニュートリノは我々の宇宙に大量に存在し、わずかながら质量を持つことが知られています。しかし、その质量は、地上の素粒子実験などでは测定が困难で、未解明の谜として残っています。一方、宇宙における天体や物质の分布(大规模构造)の详细な観测からニュートリノの质量を测定できることが近年の宇宙进化の理论によって示され、大型観测プロジェクトが世界中で计画されています。
理论的には、精緻な数値シミュレーションにより宇宙の大规模构造を详细に再现することが必要ですが、そのためには、多次元空间中での素粒子の集団的な运动を记述する「ブラソフ方程式」を解かなくてはなりません。この难解な方程式を解くためには膨大な计算时间やコンピュータの记忆容量が必要なため、これまではニュートリノの分布を仮想的な粒子の分布に置き换え、近似的な解を得ることしかできませんでした。しかしこの方法では、再现された宇宙の物质分布に人工的な数値ノイズが混入するという大きな问题があります。
本研究成果によって、ニュートリノの集団的な运动の様子を正确に调べることができるようになり、ニュートリノの质量を正确に测定するための理论モデルの构筑が可能となりました。
本研究成果は、2020年11月30日に、国际学术誌「The Astrophysical Journal」に掲載されました。

【顿翱滨】
Kohji Yoshikawa, Satoshi Tanaka, Naoki Yoshida, and Shun Saito (2020). Cosmological Vlasov–Poisson Simulations of Structure Formation with Relic Neutrinos: Nonlinear Clustering and the Neutrino Mass. The Astrophysical Journal, 904(2):159.