今井哲司 医学部附属病院講師、中川贵之 同准教授、小柳円花 薬学研究科博士課程学生、松原和夫 名誉教授らの研究グループは、川口展子 医学部附属病院特定病院助教と共同で、タキサン系抗がん剤(パクリタキセルやドセタキセル)の副作用の原因となる病理変化を新たに同定しました。
タキサン系抗がん剤は、乳がんなどの治疗で中心的に使用される薬剤ですが、手足の先がしびれたり痛くなる「末梢神経障害」という副作用を高频度で起こします。しかし、有効な予防法や治疗法はなく、重症化するとがん治疗を予定通り続けられなくなることもあり、大きな问题となっています。
本研究では、タキサン系抗がん剤の末梢神経障害を発症する乳がん患者およびマウスの血液中でガレクチン-3という生体内物质が増えていること、さらに、そのガレクチン-3は感覚神経を覆っているシュワン细胞から血中へと分泌されていることを発见しました。また、血中に分泌されたガレクチン-3は、マクロファージ(免疫细胞)を感覚神経の周囲に呼び寄せ、炎症を発生させることで痛みを引き起こしていることを突き止めました。これらの発见をもとに、重症化すればがん治疗を中断するしかなかったこの副作用に対する、新しい予防法や治疗法の开発が进むと期待されます。
本研究成果は、2021年2月20日に、国際学術誌「Cancer Research」のオンライン版に掲載されました。

【顿翱滨】
Madoka Koyanagi, Satoshi Imai, Mayuna Matsumoto, Yoko Iguma, Nobuko Kawaguchi-Sakita, Takeshi Kotake, Yuki Iwamitsu, Mpumelelo Ntogwa, Ren Hiraiwa, Kazuki Nagayasu, Mamiko Saigo, Takashi Ogihara, Atsushi Yonezawa, Tomohiro Omura, Shunsaku Nakagawa, Takayuki Nakagawa and Kazuo Matsubara (2021). Pro-nociceptive roles of Schwann cell-derived galectin-3 in taxane-induced peripheral neuropathy. Cancer Research, 81(8), 2207-2219.