抗体を液滴に濃縮し細胞内へ高速輸送 -クモ毒改良ペプチドと抗体による液-液相分離の誘起と抗体の細胞内輸送-

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 二木史朗 化学研究所教授らの研究グループは、液-液相分離を活用して、抗体などのタンパク質と高分子細胞内送達ペプチドを液滴内に濃縮することで、細胞内に効果的に輸送する手法を開発しました。

 液-液相分离とは、水中に存在する高分子が相互作用により集合し、高分子を多く含む相と希薄な相の2相に分かれる现象です。この时、高分子を多く含む相は水中に漂う液滴状に観察されます。近年、この现象は细胞の生命活动において重要な役割を担っていることが分かり、细胞生物学の分野において盛んに研究が行われています。一方で、薬物送达の分野においても、この液-液相分离により形成される液滴が新たな薬物キャリアとして注目を集めています。しかし、これまでに抗体のようなサイズの大きなタンパク质の细胞内输送を达成した报告はありませんでした。抗体を含むバイオ医薬品はこれまでの低分子医薬品にない优れた特性や治疗効果を示すものとして世界中で开発が进められており、细胞内への効果的な输送方法が模索されています。本研究では蛍光色素により标识されることで负电荷性を持った抗体が、正电荷性を持つ高分子送达ペプチド贵肠叠(尝17贰)3と静电的相互作用により液-液相分离を引き起こすことを见出し、さらには形成された液滴中に高分子送达ペプチドが含まれることで浓缩されたタンパク质が効率的に细胞内へ移行することを明らかにしました。この现象の発见により、今后、液-液相分离を応用した新たな薬物キャリアの开発が加速されると期待されます。

 本研究成果は、2021年6月11日に、国際学術誌「Angewandte Chemie International Edition」のオンライン版に、Very Important Paperとして掲載されました。

本研究の概要図
図:本研究の概要図
研究者情报
研究者名
二木史朗
书誌情报

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Takahiro Iwata, Hisaaki Hirose, Kentarou Sakamoto, Yusuke Hirai, Jan Vincent V. Arafiles Misao Akishiba, Miki Imanishi, Shiroh Futaki (2021). Liquid Droplet Formation and Facile Cytosolic Translocation of IgG in the Presence of Attenuated Cationic Amphiphilic Lytic Peptides. Angewandte Chemie International Edition, 60(36), 19804-19812.

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