哺乳类の视覚情报は、大脳皮质の视覚野や、中脳の上丘と呼ばれる领域で処理されます。これらの视覚系の脳の领域では、网膜に写った外界の场所に対応する地図情报が脳の中に存在することが知られています。これまでの研究で、视覚野では线の倾きや、动きの方向に対応した脳内地図が存在することも知られてきました。中脳の上丘は、进化的に古くから発达している领域ですが、最近になって上丘にも同様の地図様の反応パタンを持つ可能性が报告されました。しかし、その性质や结果の信凭性について议论が続いています。
今回、笠井昌俊 医学研究科助教と伊佐正 同教授は、2光子顕微鏡という特殊な顕微鏡を用いて、生きたマウスの上丘の神経細胞集団の活動パタンを可視化し、異なる脳の状態(起きているとき vs 麻酔で寝ている時)での反応の違いを比較しました。その結果、イソフルラン麻酔をかけた場合、上丘の地図様の反応パタンが明確になるのに対して、覚醒条件では、地図様の反応パタンが曖昧になることを発見しました。脳内の地図は「いったん形成された後は安定的に維持される」と考えられてきましたが、本研究結果は、脳内地図の柔軟な性質を明らかにすると共に、古い視覚系の視覚情報処理のメカニズムの解明につながる発見だと考えられます。
本研究成果は、2021年12月6日に、国際学術誌「Journal of Neuroscience」にオンライン掲載されました。

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Masatoshi Kasai, Tadashi Isa (2022). Effects of light isoflurane anesthesia on organization of direction and orientation selectivity in the superficial layer of the mouse superior colliculus. The Journal of Neuroscience, 42(4), 619-630.