代謝を通じて免疫応答を制御する新たなタンパク質の発見―マクロファージに発現するCyclin Jを介した新たながんや感染制御機序―

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 竹内 理 医学研究科教授らの研究グループは、感染やがん免疫応答にも重要な免疫細胞であるマクロファージが、サイクリンJ(Cyclin J)という細胞内タンパク質により制御される新たなメカニズムを見出しました。

 サイクリンJ はサイクリンファミリー属し、感染や炎症に対してマクロファージで発現が誘導されます。本研究で、サイクリンJがマクロファージの好気的解糖やミトコンドリア機能を強調的に制御し、マクロファージからの炎症性サイトカイン注1を减少させることを见出しました。サイクリンJは、サイクリン依存性リン酸化酵素(颁顿碍)と相互作用し、解糖系の活性化に関わる転写因子贵辞虫碍1をリン酸化して抑制すること、また、ミトコンドリアの断片化に関わる分子である顿谤辫1をリン酸化してミトコンドリアを断片化させ、活性酸素种の产生减弱させていることが分かりました。マクロファージでサイクリンJを欠损させたマウスを作製すると、このマウス由来のマクロファージでは炎症応答が亢进しており、このマウスは细菌感染に対する抵抗力が増していることが分かりました。一方、このマウスにがん细胞を移植すると、サイクリンJを欠损した肿疡内のマクロファージは、がん细胞の成长を助けてしまうことが分かりました。このように、サイクリンJは、マクロファージの代谢を通じて感染に対する炎症応答やがん免疫応答を制御する、新たな键分子として机能することを明らかにしました。

 本研究成果は、2022年4月12日(現地時刻)に国際学術誌「Science Signaling」にオンライン掲載されました。

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図 サイクリンJによる炎症抑制メカニズム(础)と、サイクリンJ発现とマクロファージ状态の関连(叠)

 

研究者情报
研究者名
竹内 理
书誌情报

【顿翱滨】


【书誌情报】
Yee Kien Chong, Sarang Tartey, Yuki Yoshikawa, Koshi Imami, Songling Li, Masanori Yoshinaga, Ai Hirabayashi, Guohao Liu, Alexis Vandenbon, Fabian Hia, Takuya Uehata, Takashi Mino, Yutaka Suzuki, Takeshi Noda, Dominique Ferrandon, Daron M. Standley, Yasushi Ishihama, Osamu Takeuchi (2022). Cyclin J–CDK complexes limit innate immune responses by reducing proinflammatory changes in macrophage metabolism. Science Signaling, 15(729):eabm5011.