母乳栄養児の腸内におけるビフィズス菌コミュニティー形成には先住効果が大きな影響を及ぼす―ヒトミルクオリゴ糖利用能力の低いビフィズス菌B. breveが優勢となる仕組み―

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 ヒト母乳栄养児の肠内では一般にビフィズス菌优势な细菌丛(そう)が形成され、免疫系の発达に影响を及ぼすことが知られています。これまでの研究において、母乳に含まれるオリゴ糖成分(ヒトミルクオリゴ糖:贬惭翱蝉)がビフィズス菌の选択的増殖因子(ビフィズス因子)として机能することを明らかにしてきました。このことから、欧米を中心に一部の贬惭翱蝉の商业生产と调製乳への添加が始まっています。しかしながら、ビフィズス菌は菌种や菌株によって贬惭翱蝉の利用戦略や利用能力が大きく异なっており、どのような条件において特定のビフィズス菌が优势となるのかについては不明な点が多く残されていました。特に、Bifidobacterium breveは贬惭翱蝉利用能が非常に低いにも関わらず、多くの母乳栄养児の肠内において优势となることから、そのメカニズムの解明が期待されていました。

 今回、尾島望美 生命科学研究科博士研究員および片山高嶺 同教授らは、乳児におけるビフィズス菌叢形成に生態学的視点を取り入れることで、B. breveが优势となる场合においては「先住効果」が大きな影响を及ぼしていることを明らかにしました。すなわちB. breveは、高い贬惭翱蝉利用能を有する菌种(Bifidobacterium infantisBifidobacterium bifidum)が环境中に导入される前、あるいはほぼ同时に导入された场合に、それらが分解した贬惭翱蝉の一部、特にフコースを夺うことでコミュニティーを独占することが可能であることがin vitroの混合培养実験によって分かりました。フコースは贬惭翱蝉の构成糖です。この结果を踏まえて、ヨーロッパで行われた大规模な乳児コホートの粪便顿狈础メタゲノムデータを解析したところ、出生直后にB. breveが既に検出されていた乳児では、4ヵ月时点においてB. breveがビフィズス菌コミュニティーの优占种(50%以上)となっている频度が有意に高いこと、また、このような倾向は他のビフィズス菌种では全く観察されないことが分かりました。加えて、B. bifidumが検出される乳児では、検出されなかった乳児と比较して肠内细菌丛全体に占めるビフィズス菌の占有率が有意に高いことも分かりました。B. bifidumB. breveのみならず他のビフィズス菌にも分解した糖を与えることは、先述したin vitroの混合培养実験からも强く示唆されています。

 乳児期の肠内细菌丛形成はヒトの一生の健康状态に影响を与えることが示唆されており、そのため特に先进国においては乳児期に积极的な介入を行うことが検讨され始めています。本成果は、调製乳への贬惭翱蝉添加が始まった现在において、より効果的な介入を行うために重要な情报を提供するものと考えられます。

 本研究成果は、2022年6月29日に、「The ISME Journal」にオンライン掲載されました。

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B. breve(緑色)は、乳児型ビフィズス菌のうち母乳オリゴ糖利用能が最も低いにもかかわらず、初期に環境中に導入されるとビフィズス菌コミュニティーを圧倒する(in vitroでの培養実験)
研究者情报
研究者名
片山 高嶺
书誌情报

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【书誌情报】
Miriam N. Ojima, Lin Jiang, Aleksandr A. Arzamasov, Keisuke Yoshida, Toshitaka Odamaki, Jinzhong Xiao, Aruto Nakajima, Motomitsu Kitaoka, Junko Hirose, Tadasu Urashima, Toshihiko Katoh, Aina Gotoh, Douwe van Sinderen, Dmitry A. Rodionov, Andrei L. Osterman, Mikiyasu Sakanaka, Takane Katayama (2022). Priority effects shape the structure of infant-type Bifidobacterium communities on human milk oligosaccharides. The ISME Journal, 16(9), 2265-2279.

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