ストレスに强い脳と弱い脳のメカニズム解明~うつ病の脳のしくみ解明へ前进~

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 内田周作 医学研究科特定准教授、稲葉啓通 同博士課程学生らの研究グループは、繰り返し心理社会的ストレスに晒された際に適応反応を示すか不適応反応(行動変容)を示すかの個体差を決定する脳内メカニズムを発見しました。困難や逆境に適応する能力(レジリエンス)を高める制御法の開発、ストレスが引き金となって発症するうつ病や不安障害の病態究明や新たな治療法の開発に繋がることが期待できます。

 私たち人间の脳には、ストレスを受けてもそれに适応するシステムが备わっているため、通常の生活を送ることができます。しかし一部の人は、心理社会的ストレスに适応することができずに精神疾患を発症してしまいます。このように、ストレスを感じる度合いは个人により异なりますが、その异なる原因はよく分かっていませんでした。

 本研究グループは、心理社会的ストレスに适応することのできないマウスと、适応することのできるマウスを用いて、これら2种类のマウスの脳内でどのような违いがあるのかを调べました。その结果、ストレスに弱いマウスでは、前帯状皮质とよばれる场所での神経活动が着しく低下していること、遗伝子の発现量を调节する贵辞蝉タンパク质が顕着に少ないことを突き止めました。一方、ストレスに强いマウスではこのような変化は认めませんでした。さらにうつ病患者の前帯状皮质における贵辞蝉の量も低下していました。そこで、ストレスに弱いマウスを用いて前帯状皮质における贵辞蝉タンパク质の量を人為的に増やす神経活动操作を行ったところ、ストレスに强いマウスになりました。逆に、ストレスに强いマウスの前帯状皮质における贵辞蝉タンパク质の量を人為的に减らす遗伝子操作実験を行ったところ、ストレスに弱いマウスになりました。

 今后さらに本研究を进めることで、逆境でも前向きに生きることのできるストレスレジリエンスを高める制御法の开発、うつ病や不安障害の原因解明ならびに新たな治疗法の开発が期待できます。

 本研究成果は、2023年4月6日に、国際学術誌「Science Advances」に掲載されました。

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研究者のコメント

「うつ病患者とモデルマウスに共通の脳内分子异常の発见を起点として、ストレスによる行动変容を引き起こす脳内责任部位と分子経路を同定することが出来ました。研究の过程で予想とは全く逆の结果が得られるなどの逆境も経験しましたが、そのようなデータから意外な発见や新しい病态仮説を提唱するに至りました。今后はレジリエンスの制御法开発、ならびに精神疾患における症状発现の个体差の原因となるメカニズム解明をめざすことで新たな治疗法の开発を目指していきたいと考えています。」

研究者情报
研究者名
内田 周作
书誌情报

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【书誌情报】
Hiromichi Inaba, Haiyan Li, Ayako Kawatake-Kuno, Ken-ichi Dewa, Jun Nagai, Naoya Oishi, Toshiya Murai, Shusaku Uchida (2023). GPCR-mediated calcium and cAMP signaling determines psychosocial stress susceptibility and resiliency. Science Advances, 9(14):eade5397.

メディア掲载情报

読売新聞(4月6日 29面)、日本経済新聞(4月14日夕刊 11面)、毎日新聞(4月15日夕刊 7面)および朝日新聞(5月22日夕刊 3面)に掲載されました。