物理的な现象から生命に至るまで、自然界のシステムは环境とのエネルギーや物质の交换を通じて秩序を维持しています。このメカニズムは长年にわたり非平衡热力学という分野で研究されてきました。近年、ゆらぎの热力学という新たな分野が発展し、コロイド粒子や分子モーターなどの微视的な非平衡过程の理解が急速に进んでいます。しかし、相互に复雑に影响し合う要素を持つ大规模なシステムの非平衡热力学は未解决の课题として残っていました。
今回、島崎秀昭 情报学研究科准教授(兼:北海道大学客員准教授)とMiguel Aguilera スペイン?バスク応用数学センター(Basque Center for Applied Mathematics)博士らの研究グループは、大規模な非平衡システムに対して、時間非対称性を定量的に評価するエントロピー生成の厳密な解を導出しました。このシステムは統計物理学や機械学習分野の標準モデルであるイジングモデルに基づいています。その結果、時間非対称性はこれまでに他のシステムで示されていたのと同様に秩序-無秩序相転移点近くで局所的に最大化されるだけでなく、準決定論的なダイナミクスが示す無秩序相において最大となることがわかりました。標準モデルのエントロピー生成が厳密に導かれたことで、生物や機械の再帰的ニューラルネットワークにおけるパターン生成を正確に記述することが可能になりました。本成果は大規模で複雑なシステムの非平衡熱力学の確立に向けた重要な一歩となります。
本研究成果は、2023年6月23日に、国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。

「2018年に京都大学の島崎博士の研究室を訪れたことで、神経科学?物理学?数学モデリングといった異分野からのアイデアを含む刺激的な学際的コラボレーションが生まれました。この分野の組み合わせは、大規模な神経ネットワークの組織化を理解するための新しい方法を生み出す上で重要な要素でした。」(Miguel Aguilera)
「本研究は、ニューラルネットワークの古典的なモデルを理论的に解析した研究で、同雑誌に掲载された第2弾目の研究です。使用したモデルは、物理?统计?神経科学を含む様々な分野で现れる复雑ネットワークの标準的な数理モデルにもかかわらず、その挙动はいまだ惊きに満ちています。非平衡系を特徴づける『エントロピー生成』も明らかでなく、今回、厳密解の导出にチャレンジして成功しました。厳密解は理论家にとってひとつの到达点で、础驳耻颈濒别谤补博士との出会いにより、この奥深い世界を探究できたことはこの上ない喜びです。」(岛崎秀昭)
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【书誌情报】
Miguel Aguilera, Masanao Igarashi, Hideaki Shimazaki (2023). Nonequilibrium thermodynamics of the asymmetric Sherrington-Kirkpatrick model. Nature Communications, 14:3685.