出自集団で出産するメスは「例外」ではないことを解明 -チンパンジー父系社会でメスが出自集団に居残る要因の検討-

ターゲット
公开日

  松本卓也 理学研究科博士課程学生(現?総合地球環境学研究所外来研究員?日本学術振興会特別研究員)、花村俊吉 アフリカ地域研究资料センター研究員、郡山尚紀 酪農学園大学准教授、早川卓志 北海道大学助教、井上英治 東邦大学准教授らの研究グループは、出自集団に留まって出産したメス(以下、居残りメス)2頭の観察をきっかけに、過去30年分の人口統計学的データ(デモグラフィー)と合わせて居残りメスが出自集団で出産する要因を検討した結果、一般に父系社会とされるチンパンジー集団において居残りメスが例外ではないことを明らかにしました。

 野生チンパンジー集団は、性成熟に达したメスが出自集団から出て、オスが出自集団に留まる父系社会と考えられてきました。今回、本研究グループは、タンザニア连合共和国のマハレ山块国立公园に生息する野生チンパンジー「惭集団」の居残りメス2头を详细に観察し、同集団で过去に観察された5头の居残りメスの记録と合わせて分析を行いました。その结果、集団个体数の减少や环境収容力の増大による採食竞合の度合いの减少、母亲や养母からの子育ての援助(下図参照)、仲の良い同时期の居残りメスの存在、比较的若い年齢での出产が、メスが居残る要因として考えられることが示唆されました。さらに本研究グループは、同集団において蓄积されてきた人口统计学的なデータを分析し、居残りメスが见られない时期は、性成熟に达したメスの数自体が少ないことを示しました。また、野生チンパンジーの长期调査地の人口统计学的な研究をレビューし、これまで例外とされてきた出自集団で出产するメスが、人口统计学的なデータが公表されているすべての长期调査地で観察されていることを示しました。以上のことから、メスが出自集団で出产するという现象は例外的なものでなく、従来言われてきたよりもチンパンジー社会において一般的な现象であることがわかりました。

 本研究成果は、2021年1月14日に、国际学术誌「笔谤颈尘补迟别蝉」のオンライン版に掲载されました。

メイン画像
図:居残りメスのザンティップが母のクリスティーナに毛づくろいしている様子。
研究者情报
研究者名
松本卓也
书誌情报

【顿翱滨】

【碍鲍搁贰狈础滨アクセス鲍搁尝】

Takuya Matsumoto, Shunkichi Hanamura, Takanori Kooriyama, Takashi Hayakawa & Eiji Inoue (2021). Female chimpanzees giving first birth in their natal group in Mahale: attention to incest between brothers and sisters. Primates, 62, 279-287.