91视频

京都大学広报誌
京都大学広报誌『红萠』

ホーム > 红萠 > 授业?研究绍介

研究室でねほりはほり

2024年秋号

研究室でねほりはほり

白く长いしっぽに导かれ、标高4,000尘を超える山々を行く
ユキヒョウはつなぐ国と国、人と人

木下こづえ 准教授
アジア?アフリカ地域研究研究科

白银の毛并みに混じる黒い斑纹模様。长く太い尾を揺らし、标高4,000尘を超える山々でくらすユキヒョウ。植物すら生えないほどの厳しく険しい场所ゆえに、调査が难しく、今なお谜の多い动物だ。「现在、野生下にいるユキヒョウの数は推定で3,000から8,000头。密猟や気候変动などの影响で数を减らし、絶灭を危惧されますが、研究者が少なく、生息数の全貌は分かっていないのが実情です」。木下こづえ准教授は、そんな数少ないユキヒョウ研究者の一人。研究?调査にとどまらず、生息地域の経済?教育支援にまで活动の领域を拡げる木下准教授に、偶然の出会いから始まったユキヒョウ研究の歩みを闻いた。

「研究者ですら、野生下のユキヒョウには人生で一度出会えるかどうか。私も姿を见たのは一度きりです」。北はロシア、南はネパールまで12か国の山岳地帯をまたいでくらすユキヒョウは、世界で最も高い场所に生息するネコ科动物。「生息密度を京都府で例えると、府内に10から50头程度。しかも、生息地はいずれも国境付近。调査しづらいゆえに生态に谜が多く、〈幻の动物〉と呼ばれています」。

(図1)自动撮影カメラで捉えたユキヒョウ
初めて调査に访れたモンゴルでの一枚。痕跡を頼りに仕掛けた自动撮影カメラが、贵重なユキヒョウの亲仔の姿を捉えていた

姿の见えないユキヒョウに迫る手がかりは、足跡や粪、岩に吹きかけられた尿、噛みちぎった草など、ユキヒョウが残したあらゆる痕跡。そうしたヒントを頼りに行动范囲を绞り込み、自动撮影カメラを设置すれば、映像からユキヒョウの行动や社会の一端が见えてくる。「これは、自动撮影カメラが捉えたユキヒョウのおやです(図1)。この地域で亲仔の姿を確認できたのは初めてのこと。ほほえましい一枚ですが、この場所が繁殖できる環境を備えているという証明でもあるのです」。

カメラの匂いを嗅ぐ姿。好奇心が旺盛で、カメラを见つけるとすぐに近寄ってくるのだという

尿スプレーと呼ばれるマーキング方法。岩の壁や木などに尿を吹きかけている

近隣の动物园にやってきた、ユキヒョウをきっかけに

ユキヒョウの生息域
主な調査拠点はキルギスとネパール。「私の研究には糞の解析が必須。高山で一緒に糞を探してくれる仲間のいる国を拠点にしています。年に一度は訪ねて、それぞれ1か月程度滞在します」(The IUCN Red List of Threatened Speciesの図を元に作成)

ユキヒョウとの出会いは、繁殖学を学ぶ大学生だった2006年にさかのぼる。そもそも繁殖学への関心の芽生えは、中学生の頃に見たテレビ番組。「動物園や水族館での人工繁殖の紹介でした。絶滅危惧種に関心のあった私の心に、『絶滅から救うには、命をつなぐことが大切なんだ!』とビビッと響いた。そんな思いを胸に進学した神戸大学に、たまたま! その番組に出ていた楠 比呂志先生が着任されたのです」。楠先生は当時、希少動物の人工繁殖を手掛けられる数少ない研究者の一人。「北は北海道、南は沖縄まで、飼育施設から『発情が来そう』という情報があれば飛行機に飛び乗り、駆けつけておられました」。

楠先生の研究室への配属と同じ顷、大学近くの神戸市立王子动物园にフランスの动物园からやってきたのがユキヒョウのティアン(♂)だった。「すでに饲育されていたミュウ(♀)との繁殖を研究室で手伝うことになり、言われるがまま、これまでに见たこともなかったユキヒョウに関わり始めたのです」。まずは相手を知ることから。毎朝、动物园に通って観察した。「でも、待てど暮らせどティアンが寝室から出てこない。8か月间、尻尾しか见ない日が続きました。付けたあだ名は『引っ込みティアン』(笑)」。

ティアンを待ちながら、ユキヒョウやジャイアントパンダなどを対象にホルモンの研究にいそしんだ。动物の発情期を见极め、発情に合わせて雄との同居方法等を変え、交尾を促す努力が世界中の动物园でなされているが、観察で発情を见抜くのは至难の技。「ジャイアントパンダの発情は年に一度。しかもわずか数日です。短いチャンスを掴むことに役立つのが粪尿です。粪尿に含まれるホルモンを分析して発情期を判断。行动観察と合わせて、繁殖に适した饲育环境を导き出します」。

妹の后押しで、ユキヒョウがくらす念愿の岩山に

「私のフィールドは动物园と水族馆。生息地に行くなんて、考えもしませんでした」。転机は2012年、京都大学野生动物研究センターの研究员になったことだった。「センターの方々の多くが、野生下で対象动物を调査する环境です。みなさんに连れられてフィールドワークをするなかで、『私もいつか、野生下のユキヒョウを研究したい!』と思い始めたのです」。

強力な後押しとなったのが、双子の妹で広告会社に勤める木下さとみさんの存在。「動物園に行くと、ユキヒョウを指して『チーターだ』、『トラだ』と話す来園者に遭遇するんです。『ユキヒョウだと知ってほしいなぁ』。そんな気持ちでこぼしたつぶやきをきっかけに、妹の作詞で『ユキヒョウのうた』が完成(笑)。さらには、〈ユキヒョウさん〉というキャラクターが生まれました」。さとみさんの力も借りて、多くの人にユキヒョウの魅力を伝えて保全活動につなごうと、「まもろうPROJECT ユキヒョウ」を共同で設立。2013年には、ユキヒョウの生息地に念願の初渡航。姉妹でモンゴルへと降り立った。

姿こそ见られなかったものの、木下准教授を感动させたのは雪山のあちこちに残る痕跡。「足跡を见て、本当にここにいるんだと実感して胸がいっぱいでした」。现地调査では、学生时代の6年间、毎日のように通った动物园での観察経験を存分に発挥。「『私がユキヒョウならここで爪を研ぐ!』という勘が私も知らぬ间に身についていた(笑)。ユキヒョウの気持ちになって、『ここだ』という场所にカメラを仕掛けると、映像には高确率でユキヒョウの姿がありました」。野生下だからこそ见えてくる新しいユキヒョウの姿も多数。「动物园での饲育や繁殖の新たな提案につなげたい」。

ユキヒョウを通して気づく、地域の文化と暮らし

野生下のユキヒョウとの初対面を果たしたのは、2016年、インドでのこと。「颜を上げると、民家の里山を悠々と歩く姿。美しさにとにかく见惚れていました。一方で、かつては人里にほとんど降りなかったはず。このかいこうの背景には、ユキヒョウによる家畜の被害があるのです」。

2016年、インド?ラダック地方での调査でついに出会った野生のユキヒョウ

ユキヒョウは、生息地域の多くで生态系维持の象徴种。12の生息国では、纷争地帯を含むにもかかわらず、数年に一度、保全会议が开かれる。大切に扱われる一方で、ユキヒョウに家畜を袭われた住民による报復杀が频発。个体数减少の原因となっている。「ユキヒョウの饵动物などの密猟も絶えません。现地调査を通して、野生动物の保全には人々の暮らしを守ることが重要と感じました」。

そうして、ユキヒョウの魅力発信から始まったプロジェクトは、生息国の产业から生まれた「ユキヒョウさん」グッズの贩売、地域の子どもたちへの环境教育の支援などに活动の幅を広げている。「ユキヒョウを通して、生息国の文化や暮らし、価値観に触れました。日本の人たちにも同じ体験を提供して、生息国と自分たちとのつながりに目を向けるきっかけになれば。それが巡り巡ってユキヒョウの保全と、人々の暮らしを守ることにつながるはず」。

研究を始めた当初は、日本で唯一のユキヒョウ研究者だったが、今は仲间も増えている。「繁殖は、环境が整わなければつながらない。动物が命をつなぎ続けるためには、动物自身だけでなく、彼らを取り巻く环境も知らないといけない。世界は自分のフィルターを通してしかのぞけませんが、だからこそ他の人には见つけられない、见られない世界に出会えるものです。これからも感覚を研ぎ澄ませて、国境を軽々と越えるユキヒョウのように、ボーダーレスの研究を生み出したいです」。

「ユキヒョウさん」
「ユキヒョウさん」はイラストレーターの马込博明さん作。「キャラクターを通して特徴や他のネコ科动物との违いを知ってもらうことも目的。斑纹模様の违いなど、かなり忠実に再现しています」

「ユキヒョウさん」グッズ
キルギスの产业である羊毛を使い、キルギスの女性たちがひと针ひと针手作业で制作する。「一つひとつ表情が违います。コロナ祸で调査に行けない时期、キルギスから届いたダンボールを开けると、箱いっぱいのユキヒョウさんがこちらを见上げていて……。キルギスとつながる実感が嬉しかったですね」。ウェブショップのほか、日本各地の动物园でも贩売。利益はすべて保全活动や地域経済の活性化に役立てられる

ユキヒョウさんのSNOW HONEY
ユキヒョウがくらすキルギスの山の近くで採れた、白いハチミツ。これらのグッズは、地域の素材で製品を作り、地域経済活性化に贡献する、闯滨颁础の「一村一品プロジェクト(翱痴翱笔)」に賛同して生まれたもの

1980年以降、ユキヒョウの毛皮の国内输入は禁止。この毛皮は1960年代顷に日本に持ち込まれたものを譲り受けたもの

ユキヒョウがよく噛む植物の枝。木下准教授らの研究で、粪の分析を通して肉食のはずのユキヒョウが空腹时には特定の植物を食べていることが示唆された

子どもたちをつなぐ试み
ユキヒョウを通して、日本とキルギスの子どもたちをつなぐ试みも。「まず、キルギスの子どもたちに、自分たちとユキヒョウが暮らす岩山の絵を描いてもらいます。それを日本に持ち帰り、岩山の絵の上に日本の子どもたちが動物園で観察しながら描いたユキヒョウの絵を合わせるんです」

研究仲间とキルギスで
标高4,000尘を超える高山地域での调査研究は过酷。「酸素浓度が低くて高山病になったり、电気ガス水道もない极寒で冷え性に悩まされたり……。『もう辞めよう』と何度思ったか(笑)。でも、调査と活动を通じて出会った地域のみなさんに会いたくて、日本に帰るとすぐ、あの过酷だけど壮大で美しい岩山が恋しくなるんです」


きのした?こづえ
神戸大学大学院農学研究科 博士後期課程修了。京都大学野生動物研究センター 特別研究員、助教などを経て、2023年から現職。

授业?研究绍介

関连リンク

>>

>>

関连タグ