2025年春号
施设探访
京都大学大学院医学研究科附属
Bristol Myers Squibb棟
日本人の2人に1人が罹患するといわれる「がん」。本庶佑博士が発見した「PD-1」(*1)は、画期的な「免疫療法」の道を拓き、多くの命を救ってきた。しかし、複雑な疾患であるがゆえに、がんは依然として脅威であり続けている。「2050年までにほとんど全てのがんを制御する」という本庶博士が掲げる夢に向かって、2020年に同博士がセンター長を務めるがん免疫総合研究センター(颁颁滨滨)が発足。2024年には、医学部構内に新拠点「がん免疫総合研究センター Bristol Myers Squibb棟」(BMS棟)が完成。見通しのよいガラス張りの開放的なラボを歩きながら、免疫療法の未来を見つめた。
*1 PD-1 PD-1はT細胞(免疫細胞の一種)に存在するタンパク質で、免疫細胞が正常細胞を誤って攻撃しないようにブレーキをかける役割を果たす。このブレーキを解除することで効果的ながん免疫反応を誘導できる。
谷口智宪
特定准教授
やぐち?とものり
庆应义塾大学大学院医学研究科博士后期课程修了。2025年から现职。
东大路通と近卫通の交差点に位置。春には桜が咲き、医学部构内の新たなランドマークに
「これまで学内に分散していたCCIIの研究者が、新拠点に集結します。日本で初めての〈がん免疫〉に特化した総合開発センターとして、世界に先駆けた研究を推し進めます」。新拠点となるBMS棟は、日本政府の資金援助と、製薬会社ブリストル?マイヤーズスクイブ社の寄附で建設。基本デザインと内装は、日本を代表する現代建築家の安藤忠雄さんが設計?監修した。「特徴的な円弧のデザインは、免疫细胞をイメージしています。建物内の設備や配置は、本庶センター長が研究者の目で取り入れたこだわりが散りばめられています」。
建物の円弧部の2?5阶はオープンな研究フロア。「コンセプトは、基础研究と临床研究の融合。1フロアを、両部门から1グループずつの2グループでシェアします。物理的な距离が缩まり、活発な意见交换を促す狙いがあります」。
2阶から5阶は、フロア中央を贯くらせん阶段でつながっている。「部门の垣根を超えた议论は、目に见えて活発になりました。らせん阶段は、本庶センター长が决して譲らなかった一番のこだわりです」。
実験スペースと隣接した空间は、ディスカッションや休憩室として利用。レイアウトは各グループに委ねられており、それぞれのこだわりが垣间见られる。「この緑の椅子は私が选んだもの。窓からは大文字山も见える、お気に入りの场所です」。
研究フロアの外周の一角は、教員やPI(Principal Investigator:研究室の主宰者)の個室を配置
ニトリホール
约170名収容の多目的ホール。通訳ブースを备え、国际的な学术讲演会や研究会に対応できる。演奏会等の文化活动や、公司や大学が连携したイベントの実施も见込む。
展示室
本庶センター长のがん免疫研究のあゆみを绍介。ノーベル生理学?医学赏の受赏メダルや、実験ノートなど、贵重な资料がずらりと并ぶ。イベント开催时や来客时のみ开室。
センター内の全グループが利用する実験机器や大规模なサンプルの贮蔵库、会议室を机能的に配置。「公司连携スペースには、センターと共同研究を进める民间公司のグループの居室が準备されています。附属病院の临床データや临床サンプルなどの多様な资料を活用して研究できるのは、京大ならではの强みです」。
がん治疗において、いまや免疫疗法は「第1の选択肢」です。本庶センター长が1992年に発见した笔顿-1抗体は、2000年代初头にはマウスでの実験で効果があることが报告され、2014年に认可され実临床にて応用され始めました。
「日本発の研究を、日本でもっと活性化させるべきだ」という使命のもと、本庶センター长はかねてより、がん免疫に特化した研究施设の必要性を诉えていました。がん免疫疗法の研究は日本発にもかかわらず、基础研究、临床応用ともに海外からずいぶんと遅れをとってきました。动物での研究が进んでいた2000年代、がん免疫疗法の効果を评価する日本の公司?研究机関は少なく下火になり、研究者の数もガクンと减ってしまったのです。
研究者がいなければ、研究は推し进められません。少子化も影响し、がん免疫研究に限らず、研究者人口は减る一方です。科学の衰退は国の衰退だという危机感もある。研究者を目指す若者が増えるような活気を、颁颁滨滨から生み出すこともミッションです。
がん细胞と免疫とのせめぎ合いは、まだまだ未知なことばかり。笔顿-1抗体での治疗が全く机能しない患者さんも多くいます。解决すべき课题は多いのですが、近年、目を见张るような知见がたくさん生まれています。
がん免疫疗法の研究の重要性が认知されるようになり、他分野から参入する研究者が増えました。これまでは関係ないと思われていた、肠内细菌や代谢、老化などが免疫と密接な関係にあることが分かってきた。例えば、がん免疫疗法が机能する人の便を机能しない人の肠に移植すると、笔顿-1抗体が効くようになるのです。こういった数十年前には信じられなかったことが科学的に解明されています。
颁颁滨滨ではあらゆる分野の専门家を招く予定です。风通しのよいこの新拠点なら、分野の壁を超越した研究がどんどん生まれると期待しています。
これまで6つの研究部门は京大内に分散していたので、ディスカッションするにも日程调整が必要でしたが、今ではフロアを覗いて「おっ、いたいた」。そうして会话や议论が始まります。
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